医局紹介
1.診療内容
消化器内科では、消化管疾患、肝胆膵疾患のふたつの専門研究室で診療を行っています。
消化管研究室では、クローン病や潰瘍性大腸炎を代表とする炎症性腸疾患、そして食道・胃・大腸癌などの消化管腫瘍、急性腹症や消化管出血等の急性疾患等に対し、肝胆膵研究室では、急性および慢性肝炎、肝細胞癌等の肝疾患、胆道結石や胆嚢癌等の胆道系疾患、急性膵炎、膵癌などの膵疾患に対し幅広く診断と治療を行っています。いずれの研究室においても他の診療科と連携し集学的診療を行うとともに、院内における全ての消化器疾患に対する診療(外科、放射線科とのカンファレンス、NST など)に介入しています。平成28年4月1日より炎症性腸疾患センターが開設され、1.炎症性腸疾患の適切な診断、2.診療科の垣根を越えた治療、3.チーム医療の実践を診療理念として専門医療を提供し良好な治療成績を上げています。
2.診療体制
久部高司教授のもと、各グループとも臓器別専門医が中心となり外来および入院診療を行っています。外来診療は月曜日から金曜日まで一日3~5人程度の医師で診療にあたり、あらゆる消化器疾患に対応しています。 次に、消化器疾患に関連する検査は X 線検査、内視鏡検査、腹部超音波検査を中心に各検査5~9人程度の医師で月曜日から金曜日まで、消化器内科あるいは他科依頼の患者に対応しています。治療に関しては内視鏡的腫瘍切除術、内視鏡的胆石除去術、ラジオ波焼灼術などの侵襲的治療は月曜日から金曜日まで毎日行っています。さらに内視鏡的止血術やイレウスチューブ挿入、胆道系疾患に対するドレナージ術などの緊急治療が必要となる患者に対しては、365日24時間体制で対応できる体制が整っています。また消化器疾患ということで、特に外科、放射線科、病理部とは密に連携し、より質の高い診療を提供しています。
3. 診療実績
令和4年度の外来患者総数は 32,602人(うち新患患者総数は3,575人)で、入院患者数は2,505人でした。消化管疾患のうちクローン病患者総数は784例と日本屈指の症例数であり、潰瘍性大腸炎患者総数は934例といずれも年々増加傾向です。(図 1)クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患においては、薬物栄養療法に加え、免疫抑制剤や生物学的製剤など最新の薬物療法をいち早く取り入れ、その有効性を研究会及び全国的学会に発信しております。年間の上部消化管内視鏡検査は 3,479 例、大腸内視鏡検査は 2,596 例であり、さらに近年は、消化管腫瘍における有効な治療法として普及している内視鏡的粘膜下層剥離術を年間で食道 53例、胃 98例、大腸 96例であり多数の患者が福岡県内外から御紹介を頂いています。(図 2,3,4)
また、消化管診断において従来の X 線検査のみならず最新の NBI 併用拡大内視鏡検査、ダブルバルー ン小腸内視鏡検査、小腸用カプセル内視鏡検査においても高い診断実績を維持し、日本全国に加えアジア、欧米など海外からの多数の研修医師が訪れています。 小腸疾患に関する内視鏡的治療として、腸管狭窄に対するダブルバルーン小腸内視鏡を用いた拡張術も 施行しています。
次に、肝胆膵疾患では腹部超音波検査関連手技は4,679例、ERCP関連手技は832例、EUS関連手技は415例です(図 5,6,7,8,9)。 治療は、慢性ウイルス性肝炎に対する最新の薬物療法(インターフェロンフリー治療)や胆道・膵癌の 化学療法のみでなく、肝細胞癌に対する造影超音波診断やラジオ波焼灼術、悪性胆管狭窄に対する胆管 金属ステント留置術など最新の診断治療を導入しています。胆道感染症に対しては、内視鏡的乳頭切開 術、経皮的胆道ドレナージ術を施行しています。食道静脈瘤症例に対する内視鏡治療は、待機的治療はもちろん、破裂例に対する緊急内視鏡治療も常時対応できる体制を整えています。胃静脈瘤症例は、放射線科医師とカンファレンスで治療方針を検討し、BRTOでの治療を中心に積極的に行っています。
4. 今後の展望と課題
消化管、肝胆膵いずれの領域においても多数の学会(日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本大腸肛門病学会、日本消化管学会、日本集団検診学会、日本胃癌学会、日本食道 学会、日本大腸検査学会、日本肝臓学会、日本超音波学会など)に所属し、各学会の専門医や指導医資 格を取得しています。国内の学術集会や国際学会、研究会には積極的に参加し、多数例の患者の診療実 績から得られた臨床研究の成果を講演発表あるいは論文化により国内外へ発信してきました。また厚生労働省研究班や各疾患研究グループなどを通じて多くの多施設共同研究や治験に関わり、その成果に貢献してきました。社会的には学術集会や研究会の主催、参加による医療従事者の資質の向上のみでなく、 市民公開講座やマスメデイアを介して患者や健者に対して最新の医療情報を提供し、教育的サポートや 啓蒙を行ってきました。平成24年度より始めましたIBD センター主催の市民公開講座は多くの方々 (300~500人)に参加していただき今後も年1回の開催を予定しております。
消化管、肝胆膵いずれの領域においても、患者数は未だ増加中であり、それに対応する医局員も安定した入局者数の確保に努めています。内視鏡部を始めとするハード面が充実したことで、診療のさらなる充実と研修医や質の高い専門医の育成について、教育機関としての貢献を継続していきます。 さらに紹介医師と合同で症例カンファレンスを定期的に行い地域医療との連携を深め、今後も地域医療の中核病院として役立てるようさらに努力してまいります。
消化器内科独自のホームページ(http://www.shoukaki.com/)を開設し、随時、最新の当科の診療案内や スタッフ紹介、業績などを掲載しておりますのでぜひご参照ください。